日常生活自立支援事業は、事業の実施主体である社会福祉協議会が本人と契約を結ぶことになっているため、本人の判断能力が不十分なために契約を結べない場合は、成年後見制度により選任された成年後見人との契約となります。
また、日常生活自立支援事業では福祉サービスの利用援助や日常的金銭管理が主でありましたが、成年後見制度は認知症高齢者、知的障がい者、精神障がい者の方など判断能力に不安を感じる方の財産管理や身上監護を、代理権や同意権・取引権が付与された成年後見人等が行います。
成年後見には家庭裁判所が成年後見人等を選任する「法定後見」とあらかじめ本人が任意後見人を選ぶ「任意後見」があります。「法定後見」は判断能力の程度に応じて、「後見」「保佐」「補助」があり、また、「任意後見」は、本人の判断能力が十分なうちに、任意後見受任者と契約を結び、判断能力が不十分な状況になったときに備えるものです。日常生活自立支援事業との違いは下記の通りです。
日常生活自立支援事業と成年後見制度対照表(全社協 地域福祉部作成 抜粋)
日常生活自立支援事業 | 補助・保佐・成年後見制度(法定後見) | |
---|---|---|
所轄庁 | 厚生労働省 | 法務省 |
法的根拠 | 社会福祉法 厚生労働省社会・援護局長通知等 |
民法等、政省令、家事審判規則等 |
対象者 | 精神上の理由により日常生活を営むのに支障がある者認知症高齢者、知的障がい者、精神障がい者等 | 精神上の障害により事理弁識する能力が不十分な者=補助 精神上の障害により事理弁識する能力が著しく不十分な者=保佐 精神上の障害により事理弁識する能力が欠く常況に在る者=後見 |
費用 | 社会福祉事業として、契約締結までの費用は公費、補助契約後の援助は利用者負担(生活保護利用者は公費助成) | 全て本人の財産から支弁する申立の手続き費用、登記の手続き費用後見の事務に関する費用成年後見人、監督人に対する報酬費用等 |
手続き方法 | 社会福祉協議会に申込む(本人、関係者・機関、家族等) | 裁判所に申立(本人、配偶者、四親等以内の親族、検察官等。市町村長(福祉関係の行政機関は整備法で規定。) 注:本人の同意 補助=必要 保佐・後見=不要 |
援助の特徴 | 生活に必要不可欠な福祉サービスの利用に関する情報提供、相談と代理 | 法律行為を行う保護・支援制度代理、取消、同意 |
援助の方法 | ○福祉サービスの情報提供、助言など相談援助による福祉サービスの利用契約手続き援助○日常的金銭管理 ・日常的金銭管理に伴う預貯金通帳の引出し等の代理、代行 ・福祉サービス利用料支払いの便宜の供与 ○書類等の預かり ・証書等の保管により、紛失を防ぎ、福祉サービスの円滑な利用を支える ○社会福祉事業等の在宅福祉サービスの契約代理 注:施設入所手続きの代理は援助から除外。 注:上記のことを援助の種類とし、情報提供相談、法律行為の一連の援助を権利擁護と地域福祉の視点で援助する。 |
○財産管理等の法律行為 (不動産の処分、遺産分割等の法律行為) ・同意権・取消権(補助は家裁が定める「特定の法律行為」、保佐は民法12条1項各号所定の行為、成年後見は日常生活に関する行為以外の行為) ・代理権(補助・保佐は申立ての範囲内で家裁が定める「特定の法律行為」、成年後見は、財産に関するすべての法律行為) 注:身上配慮義務 成年後見人等は、その事務を行うに当たっては、本人の意思を尊重し、かつ、本人の心身の状態及び生活の状況に配慮しなければならない旨の一般的規定を新設。また、身上監護に関する個別的規定として成年後見人等による本人の不動産の処分について、家庭裁判所の許可を要する旨の規定を新設。 |
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